3.オンライン学科教習の懸念点

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オンライン学科教習を実際に運用するにあたり、考慮すべきと思われる重要な点を、配信方式別に以下に記載します。


ライブ配信方式

【懸念点1】障害等による配信停止の対処方法

ライブ配信方式は、従来の対面学科教習を行いながらリアルタイムでその模様を配信する形式が主流になると推測する。その実施形式における懸念点としては、障害等により配信停止状況になった場合の対処にあると考える。
教習生が教室で受講し、かつ教習予定表通りに実施しなければならないという制約下で、障害の対応に時間を割く事は困難である。拠って、発生する可能性がある配信停止の原因毎に、以下の様な予防策や対処方法を予め準備し、速やかに手順通りに対処する事が肝要と考える。

(1)受診側(教習生側)に起因する通信障害による配信停止

  • 受診側(教習生側)において必要となる受講設備(機器、ソフトおよび通信環境)について、その推奨環境および設定方法を予め通知しておく
  • 可能であればデモ環境を準備し、問題なく接続し受講できるかを確認しておく事を薦める
  • 受信側の障害(機器故障、充電不足、帯域不足等)およびその他原因により受講が中断された場合は、途中まで受講済であったとしても最初から再受講となる事を予め通知しておく
  • 実際に通信遮断が発生し、受信側(教習生側)の映像がフリーズまたはブラックアウトした際には、指導員がオンライン上で呼びかけ等を実施し、速やかに復帰しない場合は受講中止と判定し、講義終了後にメール等で教習生にその旨を通知する
  • 一時的な通信遮断後に通信状況が改善し、受講を再開できたとしても、一定時間を経過していた場合は受講中止とする(その規程を予め定め、通知しておく必要がある)

(2)配信側障害(通信障害、機器障害)による配信停止

  • 配信側(教習所側)の通信環境については、必要帯域を保証する接続サービスを選択し導入しておく必要がある
  • 障害発生の可能性があるネットワーク機器(ルーター等)および配信用PC等の機器については、障害発生時に速やかに切り替え可能な様に二重化しスタンバイしておく
  • 障害発生時の機器切替手順については、予めシミュレーション等を行い、速やかな対処が出来る様に訓練しておく必要がある
  • 配信側(教習所側)の障害により配信が停止し、一定時間内に復旧しない場合においても再受講が必要である事を予め教習生に通知し、承諾しておいて頂く必要がある

【懸念点2】指導員による目視確認の正確性

上記【懸念事項1】にも関連するが、ライブ配信方式においては受診側(教習生側)の映像を指導員が目視確認できるという特徴がある。しかしながら、通常の対面教習を行いながらモニター越しに受信側(教習生側)の様子を監督する事は、指導員の負担が増えるばかりではく、重要な障害等を見逃す事も想定される。
以下に目視確認が必要な場面における対処案と指導員の目視確認をサポートするシステム機能案について考察する。

(1)オンライン受講前の本人確認

  • 教習開始直前にオンライン受講者はオンライン状態で待機し、学科指導員による目視点呼(原簿写真と受講側映像の照合)を行う
  • その時点で待機状態(受信側の映像に教習生が映っている状態)にない教習生については、受講不可とする
  • 受講開始前までに目視点呼を完了しなければならない事を考慮した人数制限および待機時間を設定する必要がある
  • 指導員による目視点呼の負担を軽減するため、顔認証ツールによる本人確認は有益と考える
  • 顔認証ツール利用の場合は、認証失敗の場合のみ個別に目視点呼を行う必要がある

(2)受講中の通信状況の確認

  • 受信側(教習生側)の映像を定期的に目視監視し、双方向性が維持できているかを確認する必要がある
  • 対面教習を行いながら、モニターにて目視監視を行い、問題がありそうな教習生に声掛け等を行うのは、非常に困難であり、問題を見落してしまう危険性がある
  • 受信側(教習生側)の映像がフリーズしている場合でも、一見して判別できない場合も想定され、結果的に一定時間以上にわたり双方向性が遮断している場合でも受講完了としてしまうリスクもある
  • 受信側通信状況等の問題で断続的に通信が遮断される様な状況も想定できるが、この様な状況を目視監視で発見した場合の対処方法も予め定めておく必要がある
  • 上述の様に受信側(教習生側)の環境が一定でない事も勘案すれば、双方向性の監視を目視で実施する事は現実的であるとは言えない
  • 全ての受信者(教習生)との通信状況をモニタリングし、問題発生時(遮断時)にはアラームを発信する等のシステムが必要と考える

録画配信方式

【懸念点1】継続受講の確認方法

警察庁の通達に記述されている通り、録画配信方式については継続受講を確認する方法を講じる必要がある。継続受講を「教習生本人が教習映像をちゃんと最初から最後まで視聴している事」と解釈するならば、それを確認する方法は「顔認証」による認証方法か、何らかの入力を配信側から教習生に要求し、その応答反応で判定する「応答確認」方式かのいずれかを採用するのが現実的と思われるが、それぞれの方式の実施方法および懸念点を以下に記載する。

(1)顔認証方式の実施方法と懸念点

  • カメラ付き通信機器(スマートホン・タブレット・PC)での視聴を前提とし、受講側(教習生側)でカメラ機能の利用を許可する設定とする
  • 受講側(教習生側)の映像と予め登録しておいた教習生本人の顔写真を照合し、教習生本人の顔が映っている事を確認する
  • 顔認証は受講中不定期に複数回実施し、認証失敗が連続した場合、もしくは所定の回数失敗した場合は受講中止とする
  • 受講中無断で不定期に顔認証を行う事、そしてどの様な条件で受講中止になるのかについて、予め教習生に説明し、了承を得ておく必要がある
  • どの顔認証技術を用いるかに拠るが、マスク着用時、手で顔を覆ったり横を向いた場合、一時的に画面から顔が離れた場合等に認証失敗する可能性がある事も考慮する必要があり、どの様な結果であれば受講中止とするかの設定が困難である
  • カメラの前に教習生本人の顔があれば、認証成功にはなるが、本当に視聴しているかどうかを定かには出来ない(テレビを観ながら、他のアプリを操作しながらを防止する事は出来ない)

(2)応答確認方式の実施方法と懸念点

  • 教習生が視聴している最中に、不定期に複数回入力要求を行い、一定時間内に正しい応答があるかどうかで継続受講の判定を行う
  • 入力要求は簡単な質問、キーボード操作、画面タッチ等を想定する
  • 視聴中に複数回入力要求がある事、そしてどの様な条件で受講中止となるかについて、予め教習生に説明し、了承を得ておく必要がある
  • 入力要求を不定期に複数回行えば、その度に教習生の視聴を遮る事になり、教習効果に支障が生じる懸念がある
  • 教習生本人でなくとも入力要求に応答する事は可能なので、本人が継続視聴しているという証明にはならない

(3)上記2方式を組み合わせる方法

  • 上記2方式の懸念点を考慮し、この2方式を組み合わせる事を考える
  • 受講中に複数回顔認証で本人確認を行いつつ、認証失敗した場合には視聴を一時中断し、入力要求を行う
  • 入力要求に正しい応答がなかった場合は受講中止とし、正しく応答があった場合は再度顔認識を実施する
  • この方法であれば、上記懸念事項の内、顔認証方式による不意の受講中止判定や応答確認方式によるなりすまし等の懸念を解消できる

【懸念点2】教習効果の低下

視聴制限をどの様に設けるかにもよるが、仮に24時間、どの教程でも受講可能(受講条件は満たしている前提)とした場合、教習生の利便性は高くなり、教習所にとっても教習進捗が上がるというメリットがある。その一方で、従来の対面学科教習と同等の教習効果が期待できるかどうかについては、大きな懸念がある。受講状況を直接確認できない分、習得状況を把握し、問題がある場合は正しく受講する事を促す対策が必要と考える。

(1)教程毎の効果測定実施

  • 録画配信方式にて視聴終了後に5問から10問程度、その教程に関する設問を用意し回答させる
  • 設定した正答率(例えば50%)に満たない場合は、正しく視聴していないと判定し、再受講を促す
  • 視聴後に設問がある事、どの様な条件で再受講になるかについて、予め教習生に説明し、了承を得ておく必要がある
  • 設問の内容、問題数、再受講の判定基準等については、各教習所にて設定可能とする必要がある

【懸念点3】録画映像の更新性

従来の対面による学科教習においては、教習生の関心を引き、教習効果を高めるために、教習生の反応を見ながら、その時点で話題になっている交通問題や近隣地域で発生した大きな事故等を教習に盛り込む様な工夫がなされていると思われる。しかし録画配信用の教習映像は撮影後一定期間そのまま配信される可能性があり、この効果が期待できず、結果として教習効果の低下に繋がる懸念がある。拠って、比較的短いスパンでの定期的な映像の入替が必要と思われる。
加えて、法改正による教習内容の変更については、随時すみやかに対応し、映像を差し替える必要がある。
つまり録画配信用の教習映像については、更新性を高くしつつ、制作コストを抑える配慮が必要と考える。

(1)自校での映像制作

  • ライブ配信方式を実施している教習所であれば、その配信映像を録画しておけば、録画配信用映像の原形となる
  • その録画されたライブ配信映像に簡単な編集(タイトル、テロップの挿入等)を加えれば、録画配信用映像として配信可能なものになる
  • 動画編集については簡易ソフトが多数存在し、PC操作が可能な人であれば十分に使用可能と思われる
  • 将来的にライブ配信のオンライン教習を止め、録画配信方式だけにしたとしても、従来の対面教習をライブ配信用設備を用いて録画し、配信用映像に加工する事は可能と考える(ライブ配信を実施していない教習所も同様)
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